基礎年金引き上げの財源に「消費税13%案」
その年金改革法案をめぐる対応も一見、与野党アベコベに見える。
年金改革法案は政府が「重要広範議案」に指定した重要法案だが、3月19日の自民党厚労部会では「出したら参院選に負ける」「小手先の改革」(河野太郎・元外相)と国会提出先送りを求める声が噴出。逆に立憲民主党はじめ野党側は「早く国会に出せ」と迫っている。
だが、表面的な対立とは逆に、与野党は審議を「参院選後」に先送りするとの方針で一致しているという。国会対応に追われる厚労省の中堅官僚が舞台裏を打ち明ける。
「5年に一度の年金の財政検証の後に改正案を出すのは決まっているから、年金局はスケジュール通りに進めたいと官邸に進言している。その一方で、今回の改正案は現役サラリーマンの保険料が上がり、遺族年金の給付抑制などでは女性が割りを食う内容なので、自民党は参院選前には国会に出したくない。野党も口では早く出せと言うが、自分たちが改正案を出させておいて反対すれば矛盾になる。本音は与野党とも改正案の審議は参院選後だという暗黙の了解があるわけです」
そうした国会談合を根回ししているとみられるのが財務省だ。
今回の年金改革案には将来の増税につながる重要な内容が盛り込まれている。政治ジャーナリスト・宮崎信行氏が語る。
「厚生年金の積立金の一部を使って基礎年金の底上げを図るというものです。これは年金受給者にとっては概ねプラスになるが、基礎年金の財源の半分は国庫負担だから、底上げすれば国庫負担が増える。その財源をどうするかが決まっていない。財務省や厚労省には消費税で賄わねばならないという意見があり、消費税率13%への引き上げという案も内々に検討されていると伝わっている。
実は、この基礎年金の国庫負担増を消費税引き上げで賄う仕組みをつくったのが野田政権の社会保障と税の一体改革で、野田氏は責任ある政治のためには増税も必要という持論がある。財務省と野田氏は阿吽の呼吸で目指す方向が一致しているとみていい」
かつて野田政権が民主・自民・公明の3党合意で成立させた「社会保障と税の一体改革」の柱は、消費税率を5%から10%に引き上げ、増収分をすべて年金・医療・介護に充てて安定財源をつくるという内容だった。
その後、安倍政権が消費税の増収分の一部を子育て支援に充てると使途を変更したうえ、少子高齢化の進展で年金の財源が足りなくなり、基礎年金の支給水準の維持が難しくなってきた。