クラシカルな外観と最新テクノロジーとのハーモニー
4輪それぞれに個別のモーターを備え、制御も4つのタイヤを別々に可能という4WDです。4輪をきめ細かく制御しながら、モーターの圧倒的なトルクと極上のスムーズさを伴った走行性はなんとも快適です。オフロードではその細かで適切なトルク配分による卓越した走破性を味わうことができるのです。クローズされたオフロードコースではこれまでのGクラスの走破性を超えるほどの安定性、そして安心感を伴いながら走り抜けることができたのです。
そしてオンロードへと移れば、モーターならではのスムーズで快適な走りは、さらに輝きを増します。エンジンモデルにあるザラザラとしたフィールではなく、想像以上にスムーズなモーターの滑らかさを感じながら、静かで快適な走行感を体験できます。これまでのGクラスに新たな走りの世界を見せてくれます。
さらに異次元の走りとして注目できるのが「Gターン」という別格の荒技です。例えば左側2輪を前進方向、右側2輪を逆回転させ後退方向に回すことで、ボディの中心を軸にフィギュアスケートのスピンのように、その場で回転できるというモードです。「狭い場所での方向転換やオフロードの行き止まりなどで、方向転換して抜け出すときに有効」とのことです。しかし一般的にはそれほど頻繁には必要としない機能でしょう。さらにメーカーではアスファルトでの使用は推奨していません。それでも4個のモーターを個別に制御することで可能になった新たな走行性、BEVならではの走りを象徴する機能としては、十分にその役割を果たしています。クラシカルな外観と最新テクノロジーとのハーモニーを感じるには最良の選択になるモデルです。
エンジン車の力強さも抗いがたい魅力
その一方で、内燃機関が持つバイブレーションや荒々しさ、アクセル操作に対するリニア感が忘れられない自分がいました。むしろエンジン車こそ、Gクラスにふさわしいパワーソースではないだろうか? 最近のBEV試乗ラッシュにいささか飽きていたところに、排気量4LのV型8気筒ガソリンターボエンジンを積み、Gクラスで最高性能を発揮する「メルセデスAMG G63ローンチエディション(以下、G63)」が目の前にあるのです。これこそ「四角いボディにふさわしい」という、誘惑にも似た感覚とともに走り出しました。
さっそく最高出力は585馬力とAMGらしくハイパフォーマンスをスタートの力強さで感じます。2570kgという超ヘビー級ボディでありながらレスポンス良く操ることができる感覚はなんとも痛快。BEVモデルのG580の3120kgに比べれば軽量ですが、サスペンションのセッティングの味つけも良く、予想以上に力強さとスポーティな反応を感じながらワインディングを駆け抜けます。確かに加速感も乗り心地も、どこか力任せで、古くさい感覚があるものの、そのGクラスというキャラクターを表現するにふさわしい走りは、決して不快ではないのです。走り込んでいくうちに「ひょっとするとGクラスを求める人はこの味を求めているのでは」と思えるほどの味がありました。
もちろん郊外ルートでの痛快な走りもいいのですが、銀座や青山界隈といった街中でブランドショップを横目にゆったりと走る優雅な姿もすぐにイメージできます。世界屈指の悪路走破性を持ちながらもファッショナブルなシーンでも十分に通用する。そのギャップにこそ多くの人たちは魅力を感じるのかもしれません。もちろんメルセデスのハイパフォーマンスモデルであるAMGを名乗るモデルだけに、どろんこのワイルドな景色とは結びつかないと思いますが、抜群の存在感はどこにおいても独特の輝きを放ちます。これこそ四角いボディは「エレガンス」と「力強さ」の絶妙なるハーモニーだと思います。
この先も、この魅力的なフォルムは残って欲しいと願いつつ、一方でGクラスが延命するとなれば電動化という道を歩まざるを得なくなるだろうと思います。例えば、今もってオールドMINIの強烈な個性を引き継ぎながら、一回り大きなボディとなった現在でも強烈な存在感を放ち続けているニューMINIのように。