郵便物が減っても郵便ポストの数は維持されたまま(時事通信フォト)
全国にくまなく設置され、郵便サービスの象徴とも言える「ポスト」。だが、電子メールの普及でハガキや封書は激減。それでもポストの本数はほとんど減らず、2万3000局ある郵便局とともに「ユニバーサルサービス」として維持される。コストを掛けてまで残す理由は何か。背景に政治的な思惑が見え隠れする。【前後編の前編】
山梨県の南西端に位置する早川町。南北に流れる早川沿いの渓谷に集落が点在する。町土の96%が森林で、人口800人あまりの「日本で最も人口の少ない町」だ。
主要道路沿いにある早川町役場から川を渡り、坂道を上った薬袋(みない)集落の入り口付近にある郵便ポストを観察したのは3月31日の午前。正午過ぎまで確認したが、利用した人はいなかった。近くに住む70代の男性が言う。
「このポストは誰も使ってないよ。私自身、今年になってから1回しか使ってない。それも往復はがきで返信を送れというから送っただけ。郵便料金も上がったから、ますます誰も使わないよ」
ある町議会議員は「郵便局の人が集荷に来てくれる時に『これ出しといて』と郵便物を渡すことがある。個人でもポストまでわざわざ行かず郵便局員に頼んでいる人はいると思う」と漏らす。
早川町には、地方銀行を含めて民間金融機関の支店はゼロ。しかし、日本一人口の少ないこの町に郵便局は5局もある。別の地区の60代女性はこう話す。
「郵便局を使うのは年金をもらう時。お金を出し入れできるのはATMか郵便局だけだから」