日本郵政の増田寛也・社長(右)から「次世代のエース」と評される根岸一行・次期社長(=左/時事通信フォト)
全国にくまなく設置され、郵便サービスの象徴とも言える「ポスト」。だが、電子メールの普及でハガキや封書は激減。それでもポストの本数はほとんど減らず、2万3000局ある郵便局とともに「ユニバーサルサービス」として維持される。コストを掛けてまで残す理由は何か。背景に政治的な思惑が見え隠れする。【前後編の後編。前編から読む】
2023年に日本郵便がまとめた資料によると、同年3月末のポスト設置本数は約17万5000本。20年間で郵便物は40%超減少したのに、法令で設置基準が定められているポストの数はわずか5.9%しか減っていないという。1日1通も投函されないポストが全体の25.1%を占めた。“使われないポスト”をそのままにする姿勢は業績の悪化に直結する。日本郵政の昨年9月の中間決算で、郵便・物流事業は営業損益が947億円の赤字だった。
物流ジャーナリストの刈屋大輔氏(青山ロジスティクス総合研究所代表)はこう指摘する。
「投函がほとんどないポストでも日本郵便はすべてを確認する必要があり、その作業には当然コストが掛かります。
一方で、『ユニバーサルサービスを提供する』という大義名分で維持される小規模な郵便局は、この郵便業務にはほとんどタッチしていません。郵便機能を担うのは大型の郵便局や委託業者。ポストを残して郵便機能を維持するコストに加え、主に窓口業務だけを担う郵便局の人件費も別で掛かっている。需要が減り続けている郵便事業を抜本的に見直すことなく続ければ、いくら値上げしても赤字を垂れ流す構造がこの先も続くことになるでしょう」