トランプ関税ショックに投資家たちはどう対応しているのか(Getty Images)
トランプ政権の関税政策で世界経済が後退局面に陥るというリスクから、日経平均株価は歴史的な急落を見せている。先の見えない市場で多くの投資家は次にどんな展開がくるのかと身構えている。強い向かい風が吹いているように見えるが、株式投資で億を超える資産を手にした“億り人”はどう考えているのか。
今回、話を聞いたのは、仕事の傍ら2人の幼い娘を育てる、30代半ばの子育てママでありながら、約240万円の元手から2.4億円の資産を築いたちょる子さんだ。株主優待を楽しみながら、高配当株への投資で年間450万円ほどの配当金を手にする一方、日経先物や個別株の信用取引でのデイトレードも手がけるマルチな投資スタイルのちょる子さんに、いかにして資産を築き、どんな銘柄に注目しているのかを聞いた。
“ほったらかし”から“全集中”へ
「まず、目先のトレンドは2026年末まで下げ相場になると予測しています。大統領選挙前から既定路線だった“トランプ関税”がいよいよ現実のものとなり、米国でも日本でも物価が上がって消費者は買い控えに動きます。その結果、今年の年末にかけて景気が後退し、企業業績も厳しくなるはずです」(ちょる子さん。以下、「」内はコメントは同)
日経先物や信用取引の建玉は、全面安の展開となった4月7日の数日前の下落局面で「逆指値していたおかげですべて手仕舞いでき、最小限の傷で済みました」というちょる子さん。株式投資を始めたのは2011年、購入したのは父に勧められたオリエンタルランド(東証プライム・4661)だった。
「当時、株式投資に関する知識まったくありませんでした。高配当銘柄を中心に投資していた父の勧めと、東京ディズニーランドの株主優待目当てで240万円ほど買ったのですが、それほど強い動機があったわけではないのですぐに熱が冷めて、証券口座を持っていることすら忘れていました」
2017年に結婚。第1子の妊娠を機に会社員としての収入に不安を覚え、別の収入源を求めて株式投資に行き着いた。
「そういえばと思い出して調べてみたら、オリエンタルランドの株価が約8倍になっていました。アベノミクスのおかげだと後から知りましたが、ほったらかしにしていたら2000万円ほどになったのですからラッキーでした。ちょうどその頃、NISAやiDeCoが話題になっていたこともあって、株式投資に興味が湧いて、そこから“全集中”で勉強を始めました」
アップル・ショック後は高配当株に資金投入
まず手始めに経済誌を2冊買い求め、「買い」と書かれた5~6銘柄をピックアップしたという。その銘柄の株価を毎日ノートに書き込み、為替や金利の動向にも目くばせしながら、2018年10月に安倍政権が消費税率を予定通り10%へと引き上げる方針を示して株式市場が下落基調になるタイミングで保有していたオリエンタルランド株を売却。そこで得た約2000万円の資金は、2019年1月のいわゆる“アップル・ショック”後、底値と見た東京エレクトロン(東証プライム・8035)に全額を投じた。
「当時の東京エレクトロンの配当利回りは約5%で、約2000万円を投じて得られる年間約100万円の配当収入は、年収600万円の私にとって大きかった」
当時、米アップルの業績予想が下方修正されたことをきっかけに世界的な株安となったのが“アップル・ショック”だが、ちょる子さんは危機を好機と捉えて動いたわけだ。
「東京エレクトロンへの投資は高配当が狙いなので日々の株価に一喜一憂することはないのですが、それでも気になって株価を見ていました。当時も今もこの銘柄は値動きが荒く、日中に大きく動きます。育児の真っ只中でしたから、片手で赤ちゃんを抱きながら、もう片方の手でスマホの株価チャートを見つめる毎日でした(笑)」
そうした日々がしばらく続いた後、2019年8月頃からは東京エレクトロンの株価のボラティリティの大きさに着目し、信用取引を利用したデイトレも始めた。高配当株と株主優待を重視した長期投資と短期のデイトレを組み合わせ、資産は2021年1月に1億円を突破。“億り人”の仲間入りを果たした。