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《誰が日本の主食を殺すのか?》「日本人のコメ離れ」は自民党と農水省の欺瞞と怠慢が招いた、長年の農政失敗の象徴である

「日本人のコメ離れ」が進んでしまった背景とは(写真:イメージマート)

「日本人のコメ離れ」が進んでしまった背景とは(写真:イメージマート)

“令和の米騒動”で高止まりを続けるコメ価格。政府は備蓄米放出などで価格安定をはかろうとしているが、思惑通りにはいっていない。このまま価格が落ち着かなければ、「日本人のコメ離れ」が加速する懸念も指摘される。だが、そもそも令和の米騒動が起こる前から、日本の米食文化は危機に瀕していた。自民党と農林水産省が長らく手掛けてきた農政の問題点をイトモス研究所所長・小倉健一氏が解き明かす。

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 日本人の主食、米。その消費量が長期的に減少し続けている事実は、農林水産省自身の統計が示す揺るぎない現実である。1962年度に1人当たり年間118.3kgあった消費量は、2020年度には50.8kgと半分以下にまで激減した(農林水産省「食料需給表」より)。食生活の多様化が一因とされる。しかし、最近の米高騰にともなう「コメ離れ」は、単なる食文化の変容などという言葉では片づけられないこれは、長年にわたり日本の農政を支配してきた自由民主党と農林水産省による愚策、怠慢、そして国民への裏切りが招いた、必然的な国家的衰退の姿ではなかろうか。

 彼らは「日本の米食文化を守る」「食料自給率の向上」と空虚なスローガンを唱え続ける。その実態は、文化を守るどころか破壊し、自給率向上どころか主食の基盤すら危うくしている。半世紀にも及んだ悪名高き「減反政策」は、農家から作る自由と経営努力への意欲を奪い、補助金漬けにして思考停止させ、日本の米生産の供給力と競争力を徹底的に破壊した。国際的な多数の学術研究が、所得補償的な補助金は農業の技術効率を低下させると明確に結論付けているにも関わらず、自民党と農水省はこの非効率化政策を意図的に推進し、農業の衰退を主導してきたのである。

 平時には、自給率が100%を大きく超えるレベルで高品質なお米を作って輸出に回し、有事には国内へと回す。これが日本の農業の競争力を高めながら、食料安全保障に繋げられる「解」であろう。輸出を増やすということは、同時に輸入も認めるわけだ。輸出もしないが輸入もしないでは、供給が不安定になり、価格が高くなるのは当然のことだ。

 農水省と自民党は、「778%」という幻の高関税率をプロパガンダとして利用し、国民と農家を欺き続けた。2013年11月15日付の日本経済新聞が報じたように、農水省は国際相場の変動に合わせて関税相当率の見解を「280%」に修正していた事実を隠蔽し、常に自らの政策に都合の良い数字だけを利用してきた。この二枚舌と欺瞞により、消費者は公正な価格を知る権利を奪われ、農家は真の経営改革から目を背けさせられた。

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