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中学受験の“不都合な真実”

スマホとSNS中心で展開される「学校内いじめ」 私立と公立の認知件数の違いを生む「人事権を持つ教育委員会の調査」の有無【中学受験の“不都合な真実”】

私立学校には「教育委員会」の調査がない(東京都「SNS東京ルール、地域・関係機関との連携、法・条例・規則等」より)

私立学校には「教育委員会」の調査がない(東京都「SNS東京ルール、地域・関係機関との連携、法・条例・規則等」より)

 東京都によると、都内中学校の2023年度のいじめ認知件数は公立校6822件に対し私立校は442件だった。1校当たりの件数で見ると、公立11.0件、私立2.4件と5倍近い差がある(第1回記事の図表参照)。なぜ私立校のいじめは公立に比べて少ないのか。フリーライターの清水典之氏が、公表データや取材をもとにレポートするシリーズ「中学受験の“不都合な真実”」。第2回は公立と私立の「いじめ認知件数」の違いの背景と、認知後の対応の違いについて検証する。【シリーズ第2回】

■第1回記事:《「退学処分があるから私立の小・中学校はいじめや暴力が少ない」は本当か 私立と公立の「暴力」「いじめ」最新データを検証【中学受験の“不都合な真実”】》から読む

スマホとSNSで展開されるいじめは発見しづらい

 学校におけるいじめの統計は、「認知件数」という言葉が示すとおり、教職員・学校側が「認知」して都に報告しない限り反映されない。「暴力」は目につきやすく、証拠が残りやすいが、昨今の「いじめ」は、SNS等で特定の誰かの悪口を言い、結託して無視したり、嫌がらせをしたりで、発見しづらくなっているのが現実だろう。

 都が作成している『いじめ問題解決のための「教員研修プログラム」』には、〈いじめの認知件数は、都道府県間や学校間における差が大きいままです。その背景の一つとして、児童・生徒の同じ言動を目にしても、 ある教職員は「いじめである。」と受け止めるのに対し、他の教職員は「いじめではない。」と受け止める認識のずれと考えられます〉とある。学校によっていじめと判断する基準に差があり、それ次第で「認知件数」は多くも少なくもなるということだ。

『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)の著者で現役塾講師の東田高志氏はこう言う。

「今は、昔のような暴力をふるうようないじめは少なく、スマホとSNSがいじめの舞台の中心になっています。公立の小・中学校はほとんどがスマホの持ち込みを禁止していますが、私立は電車やバスで通学することが多く、災害や何かのトラブルが起きたときのために、スマホの所持を認めている。

 ICT教育をウリにしている学校などは、生徒全員がタブレットをもって授業を受けているとアピールしていますが、塾の生徒に聞いた話では、『先生がICT機器の扱いに慣れていなくて、一部の生徒は授業中にSNSで悪口言い合っていたりする』そうです。ですから、私立の方がいじめが極端に少ないというのは、あまり信じられません」

 多くの私立校では授業で使うタブレットには対策をしており、スマホも通学時以外は教員預かりとし、校内では使用禁止としているケースがあるが、なかには隠し持って使う生徒もいるようだ。

次のページ:「私立はいじめが起きても隠蔽されがち」の指摘も

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