トランプ大統領の関税政策に中国はどう対抗するのか(Getty Images)
4月5日にベースライン関税、9日には国・地域別関税を発動したトランプ相互関税政策だが、後者については同日、中国を除くすべての国・地域に対して適用が90日間停止された。対抗措置を採る中国に対しては8日、34%が84%へと引き上げられ、さらに9日には125%(合成麻薬「フェンタニル」を含む違法薬物の流入が続いていることなどを理由に3月に課せられた20%を加えると145%)へと引き上げられた。
中国だけが突出して高い関税をかけられることになったわけだがトランプ政権は11日夜、一部の電子機器については除外すると発表した。しかし、ラトニック商務長官は13日、「半導体関連に対して新たな個別関税が今後、1~2か月後に打ち出される」とメディアを通じて明らかにしており、トランプ大統領も13日午後、SNSを通じて「除外ではない、別の関税に移されるだけだ」などと発言。米国商務省は14日、半導体・半導体製造装置、医薬品・原材料の輸入に関して、国家安全に影響を及ぼしているかどうかの調査を開始した。
11日の段階で高関税が解かれると発表された対象は、CPU、メモリなどの半導体デバイス・マザーボード、ディスプレー・液晶モジュール、サーバー・通信設備、半導体製造装置、半導体部品・ICなどに分類される製品だ。アップルのiPhone、Mac、Apple WatchやエヌビディアのGPUなど、中国から輸入される広範な電子製品・部品が対象となる。
米国内には、グローバリゼーションを主導し、グローバリゼーションで事業を大きく成功させた広範な産業に広がる大手企業・金融機関などのグループと、そのグローバリゼーションの結果、大きな不利益を被ったとするグループが存在する。後者グループの意思に沿うかたちで政策立案を行っているように見えるトランプ大統領だが、前者グループの収益の拠り所となるグローバリゼーションそのものを否定し、第二次世界大戦後に始まり、冷戦終了を経て集大成されたグローバルな自由貿易体制を根底から壊そうとしているのだから抵抗は大きいだろう。
加えて、政策立案グループの視野が狭いのか、相互関税政策による副作用の大きさや、その広がりをしっかりと把握できていないようにも見える。そうした結果として、およそ国家の政策発表としては極めて異例となる朝令暮改の日々が続いているのだろう。
相互関税政策がうまく機能するかどうかは、サプライチェーンの再構築が可能かどうかに尽きる。しかし、一部の電子機器に対する課税猶予は、米中にまたがるサプライチェーンが複雑に絡み合い、強固に結びついており、それを引きはがすのは難しいことを改めて浮き彫りにした。米中の結びつきは今や国境を越えて拡散しており、国ごとに設定する関税政策では、米中デカップリングの達成は難しいだろう。