万博に注力しているパソナは大阪行政の一端も担う(パソナ館。時事通信フォト)
多くのパビリオンに行列ができるなど注目を集める大阪・関西万博は、大阪の政治・行政の権力を独占する大阪維新の会にとっても最大の目玉イベントだ。しかし、既得権の破壊を掲げてきた改革政党の政策もまた在阪企業の新たな“利権”の種になっているのではないか──。
維新による行政改革を追い風に大阪・関西でビジネスを広げる
開幕中の万博で高い人気を集めているのが、企業パビリオンのパソナ館だ。アンモナイトのような独特の形状の建物内には、万博の目玉の一つ、iPS細胞から作製した直径約3センチの「ミニ心臓」が展示され、開幕直後から1時間半待ちの行列となった。
パソナは万博会場と対岸の淡路島を結ぶ高速船を毎日運航。万博閉幕後には、本社機能の一部を移転した淡路島にパビリオンを移設する計画だ。
維新が主導する万博にパソナが注力するのは、必然ともいえる。維新による行政改革を追い風に大阪・関西で大きくビジネスを広げた企業として知られているからだ。
「『身を切る改革』を掲げた維新は区役所の職員を減らし、窓口業務をどんどん民間に業務委託していきました。そこに食い込んだのがパソナです。見ただけではわからないけど、大阪市の区役所では、フロアの案内や住民票交付の受付などは職員ではなく、パソナなどの派遣社員がやっています」(大阪の地方議員)
パソナは大阪市から窓口業務のほか、生活保護受給者への就職支援事業なども受託。2023年度は窓口業務だけで9億円超の業務委託があり、多くが入札を経ない随意契約だった。
桃山学院大学の吉弘憲介教授が解説する。
「2011年度以降の大阪市の歳出の推移で、特徴的なのは人件費の大幅な減少です。維新の会による影響が出る前の2010年と影響後の2017年を比較すると、人材派遣業者への委託が急増し、特定随意契約の受託額のランキングでパソナは10位に入りました。公務員という安定した職が非正規労働者に取り替えられたといえるのではないでしょうか」
ただ、こうした委託業務がすべて功を奏しているわけではない。
例えば大阪府では、コロナ禍で時短に協力した飲食店などへの「時短協力金」の支給業務をパソナに委託、総額20億円超を払ったとされるが、他県と比べて支給が大幅に遅れて厳しい批判を浴びた。支給業務に携わるスタッフの大半が外部委託されたことにより、携わる府の職員が少なくなったことが原因とされた。