大阪維新の会「既得権の破壊」にビジネスチャンスを見出す企業も(吉村洋文・代表/時事通信フォト)
大阪・関西万博は、大阪の政治・行政の権力を独占する大阪維新の会にとっても最大の目玉イベントだ。しかし、既得権の破壊を掲げてきた改革政党の政策もまた在阪企業の新たな“利権”の種となっているのではないか。
開幕中の万博で高い人気を集めているのが、企業パビリオンのパソナ館だ。アンモナイトのような独特の形状の建物内には、万博の目玉の一つ、iPS細胞から作製した直径約3センチの「ミニ心臓」が展示され、開幕直後から1時間半待ちの行列となった。
パソナは万博会場と対岸の淡路島を結ぶ高速船を毎日運航。万博閉幕後には、本社機能の一部を移転した淡路島にパビリオンを移設する計画だ。
維新が主導する万博にパソナが注力するのは、必然ともいえる。維新による行政改革を追い風に大阪・関西で大きくビジネスを広げた企業として知られているからだ。パソナは大阪市から窓口業務のほか、生活保護受給者への就職支援事業なども受託。2023年度は窓口業務だけで9億円超の業務委託があり、多くが入札を経ない随意契約だった。まさに、維新の政策がもたらす利権が、パソナに渡っているという状況なのだ。
万博が期間限定なのに対し、巨大ビジネスの“本丸”は恒久施設であるカジノ
もともと維新が目指したのは大阪市の「既得権の破壊」だった。
それまで大阪の行政に強い影響を持っていたのは大阪市職員労働組合。市職員約4万人のほとんどが加入し、OBや家族を含めた集票力は「20万票」といわれ、市長選や市議選に強い影響力を持っていた。それを背景にした職員の高給(市営バスの運転手の平均年収が800万円)などを“特権”として維新は糾弾。市の外郭団体を解体し、公営事業の民営化を目指した。
既得権の破壊という大方針の下で進められた維新の改革をチャンスと見たのはパソナだけではない。より大きなビジネスに参入しているのがオリックスだ。
同社のシニアチェアマンの宮内義彦氏は、政府の規制改革分野の審議会のトップを長く務め、「規制改革の旗手」として知られる。政府と大阪府などによる民営化政策を受けてオリックスは関西空港、大阪空港、神戸空港の運営権を次々に取得。直近の決算では空港運営は半年で169億円の利益を生み出す“ドル箱”事業だ。さらに大阪市が、万博会場と同じ人工島・夢洲でのカジノを含むIR事業を決定すると、米国MGMと組んで事業主体となった。
万博が期間限定なのに対し、恒久施設であるカジノこそが現地での巨大ビジネスの“本丸”とされている。ノンフィクション作家の西岡研介氏が言う。
「日本でのカジノ解禁議論を踏まえ、橋下徹氏は大阪府知事時代からカジノ誘致を提唱し、宮内氏とも会談していました。一方のオリックスは維新がカジノを推進するというビジョンに基づいて空港の運営権を取得してきた。まさに長期的視野で万博やIRによるインバウンド需要を見込んでいるのです」