森友学園の国有地売却問題と重なる部分
さらに当初の土地鑑定をめぐっては“文書隠蔽”も疑われている。
大阪市は鑑定の疑惑を追及された市議会で「鑑定業者とのやり取りは電話やメールだったが、もう残っていない」と答弁。ところが、実際は担当職員が情報公開請求を受けてからメールの大半を削除していたことが発覚した。その後、メール198通がハードディスクの記録から見つかった。
行政の会計に詳しい阪南大学の桜田照雄・教授が指摘する。
「今回のIR用地の疑惑は、森友学園の国有地売却問題と重なる部分があります。森友の時は、時の安倍晋三・首相夫妻への忖度によって、財務省が森友学園側に土地価格を不当に安く設定すべく動き、さらにそうした動きを隠蔽するための文書などの改竄や隠蔽などを行ないました」
大阪市に鑑定額が適正かを改めて問うと、「専門の鑑定士が鑑定したもので、鑑定結果は妥当であり、内容的に問題がないと考えている」(IR推進局)と回答した。
一方、変電所がある隣接地の土地価格として、約3倍の売却額を提示された関西電力送配電は、この額での契約をのまなかった。前出の記者は「IR用地よりも高額の土地評価では関電側も納得できないのは当然だ」と指摘する。関西電力送配電は「相手方と協議中の個別案件のため、回答を差し控える」(広報担当者)としている。
IR用地には液状化対策や障害物撤去など土地の改良工事が必要だが、大阪市が788億円を上限に公費負担することになった。桜田氏はこう語る。
「当初の想定では、カジノ事業に手をあげた複数の事業者を競い合わせて、行政側が選定するはずでした。ところが、蓋をあけたら、MGM・オリックスしか手をあげなかった。撤退されたら、カジノ誘致は根本から崩れてしまう。それを避けるために土地評価額の割引を行ない、賃料を下げて、土地改良工事の公費負担という優遇措置をすることになった疑いが持たれているのです」
万博さなかに噴き出した大阪市の“市有地格安貸し出し疑惑”について、解明されるべき点は多い。
※週刊ポスト2025年5月2日号