生まれた時にすでにパソコンやスマートフォンが存在した「デジタルネイティブ」世代にとって、インターネットは“あるのが当たり前”。あらゆることでネットを利用するのも無理はないが、そうした世代の中にも、紆余曲折を経て「ネットにはあまり頼らない」というスタンスにたどり着いたという人もいる。
今年の春に大学を卒業し、金融機関に就職したAさん(20代)もその一人。なぜ彼はそのような心境に至ったのか?
Aさんは西日本出身で、高校卒業後に都内の大学に進学。高校までは、気になることはすぐにスマホで調べ、人と話している最中でもスマホをイジっているような典型的な“今どきの若者”だったが、大学で体育会系のクラブに入部したことで、性根を叩き直されたという。
「私は中学時代からあるスポーツをやっていて、大学へはスポーツ推薦で進学しました。高校まではのんびりスポーツを楽しんできましたが、進学先はスポーツの強豪校で、練習は大変厳しく、上下関係も厳格でした。
また私は両親が共働きだったので、食事は1人のことが多く、食事中でもスマホを見るのが当たり前でしたが、部の寮ではそんなことは許されません。入部当初、先輩と話している時にスマホを操作した時にはこっぴどく叱られ、スマホの基本的なマナーを初めて学びました」(Aさん、以下「」内同)
所属したクラブには、良い意味でも悪い意味でも昭和的な雰囲気が残っており、先輩と話す時に目を見ていないというだけでも、厳しく叱責されたというAさん。生活の足しにするため、空いた時間にはバイトをしていたが、生意気な高校生を相手にしたことが、ネットの距離の図り方を改めて考えるきっかけになったという。
「バイト先には高校生も多く、中には『挨拶はしなくちゃいけないのか?』とか『年上だからといって敬語を使う意味が分からない』などと言う子もいました。こちらとしては“挨拶はするものだし、年上には敬語を使うもの”と考えるものの、そんな疑問でも、ネットを探せば、『挨拶しなくてもいい』『敬語を使う必要などありません』など、自分が求める答えがどこかにある。彼らがそれらを鵜呑みにして屁理屈を言う姿を見て、『ネットは“万能”ではないなぁ』と思いました」