ワールド・ゴールド・カウンシルが発表したデータによると、2019年第1四半期に世界の中央銀行が購入した金は145.5トンで、前年同期比68%増となった。中国のデータも平仄を合わせて示しておくと、この期間、30トンを購入している。ちなみに前年同期はゼロである。金への需要は1053.3トンで、中央銀行の割合はそれほど大きいわけではない。しかし、全体が7%増に留まっている中での大幅増である。
各国当局は、債券、株式市場に対して弱気の見通しを持っているのか、地政学リスクを気にしているのか、それともトランプ大統領の国際秩序を崩壊させるような「アメリカ第一主義」にドル覇権の弱体化を予想しているのか。いずれにしても、世界の金融当局が金を買い込んでいるといった事実は見逃せないだろう。
金への投資は金利や配当が付かないといったデメリットがあるので、平常時には投資対象としての需要は小さい。しかし、世界経済が不安定になるような時期、投資家が株式、債券、REIT(不動産投資信託)などの金融商品にリスクを感じるようなときには、逆に需要が大きくなる。非常時に備えたいと思う投資家は金への投資を一度、検討しても良いだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。