現行制度を、受給開始年齢を変えても、平均余命(60歳は23.67年、65歳は19.55年、70歳は15.72年)までに受け取れる年金総額が同じになる「公平な制度」と比較してみよう。
年金を60歳で繰り上げ受給し、平均余命までの総額を65歳受給と等しくすると、受給額は17.4%減に止まる一方、70歳まで繰り下げた場合は24.4%しか増えない。「60歳からもらうと30%減、70歳からだと42%増」とだけ示されると、直感的にどちらが得かわかりづらいが、繰り上げは大きなペナルティが科せられ、繰り下げにはかなりのプレミアムが上乗せされていることがわかる。
働きながら年金を繰り下げていけば、その分だけ受給額は増えていく。現在は70歳が繰り下げの上限だが、75歳や80歳までの延長も検討されている。その場合は上乗せ率もより有利になるはずだから、「長く働く」+「年金を繰り下げる」メリットはますます大きくなる。すべての人が60歳時点で多額の資産を持てるはずはないのだから、これが高齢化時代の持続可能な人生設計のモデルになるだろう。
●たちばな・あきら/作家。代表作に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』、『もっと言ってはいけない』(いずれも新潮新書)など。近著に『働き方2.0vs4.0』(PHP研究所)など。最新刊は『上級国民/下級国民』(小学館新書)。
※週刊ポスト2019年6月28日号