別のメーカーで勤務する男性社員・Bさんの上司は50代。自宅のローンや子供の教育費のために残業をしていることを周囲に公言しているという。このような残業代目当ての働き方は「生活残業」と呼ばれており、働き方改革で生産性の向上が求められる中、時代に逆行した働き方として問題視する声も多い。
「その上司は、頑なに家に帰ろうとしない。最低20時ぐらいまで、時には22時ぐらいまで席にいることもあります。本人は『忙しい』が口癖ですが、仕事のギヤが入るのが他の人より遅いだけ。部下からすると『先に帰ってはいけない』というプレッシャーをかけられているようで、本当にやりにくい。金銭的な事情もあるのでしょうが、なんというかダサい。業績や時代の流れもあるし、いつまで残業代が出るかも分からないのに、『そんなもん目当てでマイホームを買うな!』と思います」(Bさん)
一方、定時で帰ることを心がけている上司もいる。IT企業でマネージャー職につく40代男性社員・Cさんは、基本的に30分以内の残業で済ませることを心がけている。きっかけは前職で広告代理店に勤務していた時の経験によるものが大きいという。
「当時は、残業が月に100時間超えることもしばしば。全員がそのような働き方だったので疑問を持たなかったのですが、友人や社外の人たちと交流するなかで、様々な価値観に触れることができました。計画的に働きながら勉強して資格を取得したり、家族との時間を大事にしたり、趣味を楽しむために仕事を集中して終わらせている人もいました。必ずしもモーレツで働くのが人生ではない。そのことに気づいて転職した経緯があるので、転職先ではプライベートも大事にしようと思っています」(Cさん)
さらに、自身の部下には日々自己研鑽や社外で刺激を受けることの重要性を説きつつ、自身が率先してさっさと退社。なるべく“部下が帰りやすい空気”を作るように心がけている。Cさんの部下である20代社員はこう語る。
「やっぱり上司がいると緊張感があるので、時間外はさっさと帰ってくれたほうが、緊張も解けるのでありがたい。残った若手社員で他愛もない雑談で笑ったり、そのまま飲みに行ったりなどすることで、その日のストレスを和らげている部分はあると思います」
部下が「定時で帰ります」と宣言したくなるのも、上司を含めた周囲が定時で帰らないから。仕事ができる上司が尊敬されるのは言うまでもないが、今の時代、仕事ができて定時帰宅する上司がさらに高ポイントのようだ。