「大人のひきこもり」が社会問題としてクローズアップされている。最近も世間を大きく揺るがす事件が立て続けに起きた。
5月28日、神奈川県川崎市でスクールバスを待つ小学生児童や保護者ら20人を次々と刃物で切りつける事件を起こした岩崎隆一容疑者(51才)は、定職につかず、携帯電話もパソコンも持っていなかった。容疑者には、「ひきこもり」傾向が指摘されている。
4日後の6月1日には、東京都練馬区の住宅街で、元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(76才)が、無職の長男・英一郎さん(44才)を刺殺。川崎の事件を受けて、「このままでは息子も第三者に危害を加えかねない」と危機感を感じての犯行だったという。これもまた、「ひきこもり」が要因となった悲劇だった。
内閣府は今年3月、初めて中高年(40~64才)を対象にひきこもりの実態調査「生活状況に関する調査(平成30年度)」を実施した。調査では、中高年のひきこもりが全国に61.3万人いることがわかった。
「大人のひきこもり」が増えている要因として、1990年代半ばから約10年にわたって続いた就職氷河期で新卒採用が大幅に抑制され、正社員になれない若者が社会に出るタイミングを逸して、そのままひきこもりになっていることなどが挙げられている。
注目したいのが、中高年のひきこもりには顕著な「男女差」があることだ。内閣府調査では、男性が76.6%、女性が23.4%と圧倒的に男性が多かった。たしかに、冒頭の2つの事件といい、過去を振り返ってみても、男性が起こす事件の方が多い印象がある。とはいえ、「就職氷河期」がきっかけならば、男女共に新卒採用は抑制されたわけで、ひきこもりの数に性差があるのは理解しがたい。
『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)など数多くの著書がある作家の橘玲さんは「社会的立場の違いがある」と読み解く。