前回参院選の前に安倍政権が打ち出した「新・三本の矢」に、「介護離職者ゼロ」のスローガンがあった。
政府は育児・介護休業法を改正して有給(給料の3分の2が支給)の「介護休業」を通算93日間、3回まで分割して取ることができることになったが、毎年約10万人の介護離職者は減っていない。
ヘルパーの資格を持ち、両親を介護した経験がある介護ジャーナリスト・末並俊司氏が指摘する。
「もともと介護休業という制度は、財源難で特養は増やせず、従来からあった病院の療養病床を廃止するなかで、国が家族に自宅で親の介護をしてもらうという在宅介護の考え方が基礎になっています。
しかし、介護休業をフルに使って親の面倒を看ても、何年続くかわからないため、介護休業期間は行政手続きをしたり、ケアマネージャーに相談して介護プランを立ててもらうなど介護の体制を整える準備にあてなければなりません。
だが、実際は休業期間が切れるまでに特養など入居させる施設が見つからなかったり、『介護付き有料老人ホームは金額的に無理』ということで自分で介護をすることになり、そのまま会社を辞めざるをえない人も多い」
では、老老介護にはまってお金も体力も使い果たすことにならないためにはどうすべきなのか。介護に詳しい社会保険労務士・宮崎貴幸氏の話だ。
「介護保険制度を利用することで、ヘルパーを頼んだり、デイサービスセンターを利用するにしても、できるだけ多くプロに手伝ってもらうようにする。
介護保険のサービスを受けるには自己負担がかかるが、高額になれば『高額介護サービス費制度』や医療費と合算して費用を抑える『高額介護合算療養費制度』で限度額を超えた費用は還付を受けることができます。家族の負担を少なくするのが経済的にも精神的にも長く続けられる介護サポートに必要な考え方です」