仕事をする楽しさはもちろんだが、自分の力で稼ぐプライドや喜びは、同じ働く身としてもよくわかる。「しっかり食べてよく眠って、明日もがんばろう!」と活力も湧いてくる。そんな気持ちが、施設で暮らす高齢者の心にも芽生え、力になっていると想像するとうれしくなる。
「このプロジェクトを思い立ったきっかけは、以前、先々を見越して施設に入居された元気な70代のご夫婦が、『動ける今のうちは月5万円くらい稼いで将来に備えたい』と言われたこと」と言う足立さん。施設に入居するだけで、手厚い介護が必要と思われがちだが、実際にはまだまだ元気な人も多いのだ。
ただ一方で、仕事の責任の重さを謙虚に受け止める人もいるという。仕事付き高齢者住宅プロジェクトの参加者を募る時も「ボランティアならやりたいが、責任ある仕事は無理」という声が、少なからずあるという。
「このプロジェクトで、高齢のかたが仕事をやってみると、とても能力のあることに驚かされます。こちらが年齢や介護度でできることを決めつけていたことに気づくのです。もちろん若い人と同じ働きはできないとしても、意欲のある高齢者ができる仕事は創出できると思っています。
元気なかたはご自分の可能性を閉ざさずにもっとステップアップし、多少心身に不自由があっても、工夫してできる仕事にチャレンジして、成果が挙げられる環境が理想。高齢になっても、できることは意欲的にやるのが当たり前になれば、介護のあり方も変わり、みんながもう少し生きやすくなると思います」
奇しくも今、話題の“老後2000万円問題”で、国が試算する生活費の不足額も月約5万5000円といわれる。
「生きがいや活力になる仕事を行って月額5万円の報酬が得られるしくみを目指したいと思っています」
※女性セブン2019年7月18日号