定年後の基礎的支出を減らすには「二世帯同居」という選択肢が有力である。都内在住の鈴木さん(70・仮名)は3人の子供が自立した後、東京郊外に建つ一軒家に夫婦2人で住んでいた。だが今年3月から、隣の市で暮らしていた次女夫婦が同居するようになった。
「孫が小学生になるのを機に一緒に住むことにしました。部屋は余っていたし、娘夫婦がお金を入れてくれて家計はずいぶん楽になりました。私たち夫婦が孫の面倒をみることで娘がフルタイムで働けるようになり、家族全体の収入もアップしました」(鈴木さん)
二世帯同居の最大のメリットは暮らしのなかのコストを圧縮できるところにある。ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏が解説する。
「別居時と比べて食事や光熱費などのランニングコストを確実に減らせます。暮らしぶりにもよりますが、一般的な家庭で月4万~5万円のコスト削減が可能です」
“大家族”になることで、より充実した生活を送れる可能性もある。前出・鈴木さんはこう話す。
「娘や孫が常にそばにいると気持ちが若々しくなります。苦手なパソコンやスマホを娘に教えてもらえますし、万が一、急に倒れた時の心配も別居時より減りました」
二世帯同居によって活用できるようになる制度も少なくない。
「同居していると生計が1つとみなされ、家族全員の医療費を合算できます。確定申告時に申請する『医療費控除』は年間の医療費が10万円を超えると還付が受けられます。1人分の医療費だとなかなか超えない額ですが、家族合算なら活用できる可能性が高くなる。また親子が同居すると実家を相続する時に『小規模宅地等の特例』を利用でき、土地の評価額が8割減となって相続税を大幅に減らせます」(森田氏)