東京だと「子供部屋」も作れない
地方移住ブームの背景にはまず、東京一極集中の緩和を目指す政府の戦略がある。
2014年からスタートした内閣府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は今年度から、地方創生政策の目玉の1つとして、「起業支援金・移住支援金」を導入した。
東京圏外に移住して起業や就職をした東京23区の在住者または通勤者を対象に、最大300万円の支援金を支給する仕組みで、今年度からの6年間で東京圏から地方に移住して起業・就職する人を6万人増やすことを目指す。一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事で、地域再生事業家の木下斉さんが指摘する。
「今は高齢化が進んで地方の人口減が加速する一方、東京など都市部の人口が増え続けています。このまま東京の一極集中と地方の人口減が進むと、多くの自治体が立ち行かない。そこで国は『地方創生』を掲げて、地方を盛り上げるさまざまな政策を打ち出すことになりました」
まだ国の政策がすべて機能しているとは言い難いなか、地方移住者が増えているのは、「東京にこだわらない若者」が続々と登場し、活躍しているからだ。
「昔は田舎から東京に出て、企業の正社員になってバリバリ働く人が多かった。でも今は派遣やアルバイトなどの非正規社員やフリーランスとして働く人が大幅に増えて、以前の働き方とは変化してきました。
さらに東京は土地代が高騰して都心に自宅を持つことは難しく、通勤には満員電車が避けられない。生活環境の質は、昔と比べて悪くなっている。その中で必死に競争して他人を押しのけて出世するよりも、自分の理想にそった暮らしを望む若者が増えていると移住相談者の声から感じます」(高橋さん)