地方経済に詳しい明治大学政治経済学部准教授の飯田泰之さんは、「地方移住を希望する共働き世帯も増えている」と指摘する。
「一昔前は東京郊外に家を持ち、夫は往復2時間以上かけて通勤し、妻は家を守るという生活が一般的でした。でも今は共働きが当たり前になり、夫婦そろって長い時間をかけて通勤するよりも、地方の安い家に住んで豊かな暮らしをしたいと望む人が増えました。実際に、都内では家賃が20万円もするような物件が地方では半額以下で借りられるし、一戸建ても格安ですからね」(飯田さん)
安い家賃と支援制度
もともと地方は住宅コストが安いうえ、最近は「空き家バンク」で空き家を上手に斡旋する自治体も増えている。前出の木下さんは「地方は人生のステージや目的に合わせて使うのがいい」と指摘する。
「都会で子供部屋を作るのは大変な費用がかかりますが、地方なら無料で家を譲ってくれるケースもあります。子供が小さいうちは自然豊かな田舎に住むという若い夫婦もいます。都内で騒がれている待機児童問題も地方にはめったになく、人口政策として子育て支援を打ち出していない自治体は見つけられないほどです」
ふるさと回帰支援センターのアンケートでは、移住先を選ぶ条件として「就労の場があること」がダントツのトップとなった。都内ほど高収入な仕事はないが、木下さんは「選択肢は増えてきている」と話す。
「地方の大きな魅力は不動産が安いこと。また、競合となる企業が少なく、人材引き抜きのリスクが低い。そのため、東京などに本社を置くIT企業のサテライトオフィスが徳島県神山町や宮崎県日南市などの地方に集まるようになっています。さらに、デザイナーなど働く場所を問わない自営可能な人であれば、新規創業支援制度を活用することも可能です」(木下さん)