「なぜリクルートから転職したかというと、リクルートの人事制度が変わって、ますます世知辛くなることが見えていたからです。だから、オファーがあったバンダイの方が面白いかなぁ、とまずは思いました。たしかに給料はリクルート時代の方が高かったのですが、忙しすぎた面もあります。
バンダイに入るにあたっては、『自分が開発した商品を当てたらいいじゃん!』と思ったのですが、実際に配属されたのは人事部です。でも、ここで人事のノウハウを自分自身に詰めることができました。その後人事支援のベンチャー企業に行きましたが、そこでますます様々な会社の人事を見ることができました。
そうした意味で、視野は広がりますね。給料は200万円下がりましたが、副業OKにしてくれたため、モノカキ業もフルにできたのです」(常見氏)
常見氏はリクルート時代は、様々な部署でマーケティング関係の仕事をしていたが、バンダイに行くことでマーケティングの知見を活かした人事活動をするに至った。そうした下地があったからこそ、学生を応援する動画をウェブに公開したり、「あの会社の人事は面白い」という評判を獲得する術に長けるようになったのだ。
そこから“人事道”を追求し続け、今では人事関連の専門家として、大学で教鞭をふるったり、書籍を執筆し、メディア出演をしている。200万円年収を下げる、という選択をしたことにより、結果的に、長い人生の糧となる「専門性」を身につけたわけだ。
常見氏は「段々と自分のフィールドを見つけられたように思えます。年収が下がるのは抵抗あるかもしれませんが、やりたいことを見定める手としてはOKなのでは。ただし、転職は慎重に」と語る。
長期的視点に立ち、「前向きな年収減少」を受け入れて転職する人たちが少なからずいるのは間違いないだろう。