多くの人は70代後半や80歳を過ぎてから、「子供が相続争いをしないように、遺言書でも」と考え始める。しかし、それでは遅い。
「遺言書は60歳から作成に取りかかっても早すぎることはありません」
そう指摘するのは「夢相続」代表の曽根恵子氏だ。“まだまだ元気でバリバリ仕事をしている年齢で遺言なんて”と考えるのはもっともだが、遺言書の作成には、相続トラブルを防ぐ以外にもメリットがある。曽根氏はこう語る。
「遺言書を書くときにはセットで財産目録を作成します。サラリーマンの方であれば、雇用を延長して働く場合でも、60歳の定年時点で退職一時金が支払われるケースが一般的です。
退職金は人生の中で最も大きな収入だから、退職金をもらった段階で総資産がいくらあるのか、老後の資金計画がほぼ見えてくる。だから60歳で遺言書、つまり財産目録を作ってみることが、第2の人生の生活設計を立てるいいきっかけになるのです」(曽根氏)
では、財産目録作成のポイントは何か。
「預貯金、株や債券、不動産など資産の種類ごとに金額を書き出してみる。預貯金は通帳の残高を見ればわかります。株や債券は変動するのでその時点の評価額。
ちょっと難しいのは自宅など不動産の評価で、原則は国が決めている路線価で計算します。路線価が分からない場合は、固定資産税の通知書にある評価額でもいいでしょう。住宅ローンなど借金が残っていれば、当然、差し引いて資産総額を計算します」(曽根氏)