「子供夫婦まで巻き込む」のは避けたい
80歳以降に「持ち家」から「賃貸」に移るのが富裕層の理想的な選択だとすると、下級高齢者がこれを選ぶことは不可能なのか――。
適切な介護サービスのある有料老人ホームの月額利用料が約30万円だとしよう。年金が月額20万円なら、足りない10万円を貯金から取り崩すしかない。
貯蓄がなければ子どもの世話になるしかなく、子どもの家計に余裕がなければ親子そろって最貧困に転落してしまう。そんな罠にはまらないためにも、「長く働く、いっしょに働く」ことを夫婦でじっくり相談してみたらどうだろう。
乏しい金融資産を運用するより、ほとんどのひとにとっては働くことが最大の「資産運用」だ。上級高齢者にはなれないかもしれないが、すくなくとも下級高齢者からは脱することができるはずだ。
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)などベストセラー多数。新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題。
※週刊ポスト2019年8月16・23日号