かんぽ生命は保険料を二重に徴収するなど不適切販売の恐れのある契約が、過去5年だけで約18万件にのぼることを明らかにした。地方在住者や高齢層にとって、全国どこでも窓口とATMのある「ゆうちょ」もまた、かんぽと並び、絶大な信頼を集めるブランドだった。しかし、ここでも保険と同じ構造問題が生じている。
銀行などの窓口で勧められる「投資信託」は元本保証がない商品で、窓口で買った客の半数近くが損をしたという金融庁のデータもある。ゆうちょ銀行はこの投信を70歳以上の高齢者に対してリスクを十分説明をしないまま販売していた疑いが指摘されている。
かんぽ生命ばかりかゆうちょ銀行も高齢者を“食い物”にしていたのである。この問題が発覚(今年6月)すると、24日の会見で日本郵政の長門正貢社長は「守るべきルールが順守されていなかった点について厳粛に受け止め、深く反省しております」と謝罪した。
具体的には、全国に約230ある、ゆうちょ銀行直営店の約9割で、高齢者への勧誘・販売の際に健康状態や理解力を確認する社内ルールが守られていなかったことが明らかになった。70歳以上の顧客の場合、営業担当者は最初の勧誘時と実際の契約時の2回、管理者の承認を得る必要があるが、約4割の取引で1回だけになっていたのだ。
そうしたルールを逸脱した投信販売が横行したのはなぜか。ここに、日本郵政グループの収益構造の問題があると考えられている。
約180兆円という巨額の預金残高を誇るゆうちょ銀行だが、国債などで安定運用していくという従来のやり方が、曲がり角に差し掛かっている。マイナス金利政策のもと、国債での運用だけでは利益は出ない。
そこで、“新たな収益の柱”として成長しているのが「投資信託販売」だった。昨年度の年間販売額は約8900億円と、前年度から2割も増えたが、そこがルール違反の温床となった。楽天証券経済研究所客員研究員の経済評論家・山崎元氏が解説する。
「かんぽ生命の問題と同様に、ゆうちょ銀行の投信販売でも、上からは数字を求められる一方で、現場はずさんな売り方が許される環境が放置されていたということでしょう。局員は保険や投信を売ることで得られる販売手当のために不正に及んだのです」