世界中の人々が訪れる2020東京五輪。その開催までに安全性を高めるため、鉄道各社がホームドア設置を推進している。
五輪オフィシャルパートナーである東京メトロが掲げる経営計画「東京メトロプラン2021」では、「東京2020大会の開催とその先を見据え」、ホームドアの整備を進める方針が宣言されているなど、JR・私鉄各社が五輪に向けて急ピッチでホームドア設置を進めている状態だ。
しかしこのホームドアの設置が、一部の電車の「早期退職」に繋がっている。ホームドアを作る場合、全ての車両のドアの間隔を統一する必要があるため、扉の規格が通常と異なる車両は扉を改造するなどされているが、中には引退を余儀なくされる車両もあるのだ。
40年前に登場し、丸みを帯びた先頭部の形状から「だるま」の愛称で親しまれた京急電鉄の4扉車、800形。京急で最後に残った4扉車だったが、ホームドア設置のために今年6月で引退した。
また、日比谷線と東武線は相互に乗り入れているため、ホームドア設置に際しては20メートル4扉車に全車両を統一する必要がある。そのため、18メートル3扉車である東京メトロ03系と東武20000系は2020年度までに相互直通運転から引退することとなった。
電車の退職は、「古くなったから」という理由だけとは限らないのである。
※週刊ポスト2019年8月30日号