金融市場では相変わらず米中貿易戦争の行方が大きな関心事となっているが、グローバル市場に与える影響は薄れてきたようだ。
トランプ大統領は8月29日、ラジオ番組に出演し、貿易協議について「これまでと違うレベルで再開する予定だ」と話すなど、前週後半の段階では、米中貿易戦争が緩和されるのではないかといった見通しが広がり、世界の株式市場は持ち直し気味に推移した。
しかし、トランプ政権は9月1日、当初の計画通り、追加関税措置第四弾の一部として、1100億ドル相当の中国からの輸入品に対して15%の追加関税を課すことを決め、即日実行した。週末には緩和期待は裏切られる形となった。
8月29日、中国商務部の定例記者会見において高峰報道官は、「反撃の手段はたくさんあるが、現在討論すべきは、アメリカによる5500億元相当の中国製品に対する追加関税措置を取り消し、貿易戦争の加速を止めることである。中国はこの点について、アメリカと激しくやり取りを行っているところである」と発言、アメリカ側が9月にワシントンで行う予定としている米中協議開催の条件として、9月1日の追加関税措置の延期ないし中止を中国側は示唆していた。現状では米中協議開催のメドは立っていない。
こうした悪材料があったにもかかわらず、9月2日の上海総合指数は1.31%上昇した。同日のアメリカ市場はレイバーデーの休場であったため反応は分からないが、香港ハンセン指数は0.38%下落に留まっている。デモが激しさを増している点を考えると、この程度の下げで収まっていることには意外感がある。日経平均株価は0.41%下落したが、円高懸念がある中での下落幅という点を考慮すれば、比較的落ち着いた動きであったと言えよう。
トランプ大統領の仕掛ける米中貿易戦争はそろそろ限界にきており、市場はトランプ大統領の足元を見始めているのではなかろうか。
トランプ政権は、貿易赤字を減らすことよりも、「中国製造2025」計画(2015年に発表した今後10年間の製造業発展のロードマップ)を阻止し、米中複雑に絡み合ったサプライチェーンを分断、製造業の国内回帰を進めることを重視しているようだが、そのための追加関税措置の実施や、ファーウェイ(華為技術)を中心とした個別ハイテク企業に対する市場からの排除といった政策は残念ながら、それほど効果を現してはいない。