飲酒や車の免許取得など、若い頃はできることが増えていく“嬉しい関門”だった「年齢制限」。それが逆に歳を重ねたことが理由で「できなくなること」が出てきてしまう。
都内在住、70代半ばの男性はこう肩を落とす。
「私は独身で子供もいません。現役引退後、元気なうちに少しだけ貯めたお金で海外旅行をしたいと思い、銀行の窓口で旅行費用の200万円を下ろそうとしたら、『ちょっと待ってください』と声をかけられました。
名前や年齢を聞かれた後、幹部らしき行員まで出てきて、詐欺被害を心配されたのか、『何に使うのか』『家族は知っているのか』などと、30分以上も押し問答が続いたのです。途中で『通報の義務がある』と警察まで呼ばれそうになりました。なんとか旅行会社に連絡がついたのでお金は下ろせましたが、年寄りというだけでこんな思いをするなんて……」
金融機関の窓口では、しばしばこうしたやり取りが起きており、「高齢者制限」や「シニア版年齢制限」がにわかに社会問題化しつつある。
8月5日付毎日新聞の特集〈自分の預金が下ろせない? じわり広がる“高齢者制限”〉は、預貯金を引き出す際に使途の詳しい説明を求められるなど、高齢者に対する現金引き出し制限などに触れ、〈早ければ60代から「自分のお金が自由に使えない」状況〉が生まれていると報じた。記事では、70歳以上の女性が銀行の貸金庫を利用しようとした際、「契約には代理人が必要」と言われた事例も紹介されていた。