民放各局が人気タレントや看板アナウンサーを起用し、視聴率を競い合う早朝の情報番組。5~6時台から始まる2時間程度の生放送は、スピード感と柔軟性が求められる過酷な現場だ。
そんな制作現場では、1回の放送をおよそ30~40人前後のAD(アシスタントディレクター)が支えているという。テレビ制作会社に勤める、20代男性の新人AD・Aさんにその日常を聞いた。
情報は「口伝え」 昔ながらの指導方法
ADに求められるもっとも大切な役割は、オンエアが円滑に進むように業務にあたること。朝の帯情報番組は、番組内で班分けがされており、ニュース、芸能などのジャンル別の担当や、スタジオでの生放送を管理するチームに分かれている。
現在のAさんの仕事は、カンペの作成、出演者が利用するスタジオでの運搬作業、台本の印刷などの軽作業。情報は口で伝えるのが、昔からの“文化”だという。台本の印刷の仕方、モニターの位置ひとつをとっても、担当の演出家やプロデューサーが好むスタイルがあるため、自分でメモを取るか、身体で覚える必要がある。
スタジオで余った弁当が、貴重な夜食
朝の生放送に備えるため、深夜に出社。別番組の収録で弁当が余っていたらもらえることもあるが、食べるものはコンビニで調達をすることが多い。夜食後は、台本の出力やカンペの作成、スタジオのセッティングなどの下作業を経て、3時から制作陣での打ち合わせと出演者抜きでのリハーサル。1時間の休憩後に、本番の生放送が始まる。
「生放送中は、放送内容が目まぐるしく変わるので、気を抜く瞬間はありません。ニュース班から次々と新しい構成表が送られてくるので、その場でカンペや台本の文言を書き換えて演出の変更に対応しないといけない。現場には、災害や大きなニュースの報道で緊張感が漂う。多くの人が見る生放送であることに意義を感じられる人、バタバタした状態にやりがいを感じる人には、向いている仕事だと思います」(Aさん、以下「」内同)