興味深いデータがある。「夫の所得階級別の妻の有業率」データだ。『夫婦格差社会』(中公新書)などの著書がある、経済学者の橘木俊詔さんが解説する。
「1982年当時は、妻は夫の所得に応じて“働くか否か”を決めていたようです。夫の稼ぎが少なければ少ないほど妻も働きに出て、夫が700万円以上も所得があるならば、6割以上は専業主婦でした。
ところが、10年後の1992年になると、夫の所得が700万円以上でも、半数以上の女性が働くようになりました。2002、2012年になると、夫の収入が多くても妻は働くという傾向は、さらに強くなりました。一方、年間100万円以下の低所得の夫を持つ妻の有業率は、20年で10ポイント近く低下しました」
その結果、何が起きたかというと、もともと高所得の世帯(夫の収入が多い世帯)は妻の収入もプラスして、さらに高所得になった。その一方で、もともと低所得の世帯(夫の収入が少ない世帯)は、妻が仕事に就かなくなって、さらに収入が低下。つまり、世帯間の所得格差が加速度的に開いていっているのだ。前出の橘さんはこう分析する。
「低所得にもかかわらず、妻が働かないのは、【1】そもそも学歴が低いため働く先が限られる、【2】子供を預けるお金がなくて働けない、【3】所得が低いため親と同居せざるを得ず、親の介護に時間がとられるなどの理由から、働きたくても働けない状況なのでしょう」
低所得層は、生活保護制度や自治体ごとの手厚い補助金などがあり、それを受け取るためにあえて働かない判断をする世帯も多いという。
「しかし、補助金を期待して仕事をしないでいると、いつまでも貧困から抜け出せないばかりか現状の階級が固定化し、高所得層との格差は開く一方です」(橘さん)
※女性セブン2019年10月10日号