実は、金融庁報告書の付属資料には、そうした予備費にかかる金額も調査されている。それによると、住宅リフォームが約465万円、健康・要介護に必要な金額が最高1000万円とされている。これらを加えると、不足額はさらに4150万円に増える。
そのうえ、体の自由がきかなくなれば老人ホームなどへの入居費用も考えておかなければならない。
「老人ホームなど介護施設に入居して満足なサービスを受けようと思えば、月におよそ30万円はかかる。仮に夫婦一緒なら2倍の60万円です」(橘氏)
家計調査では60代以上の無職世帯(2人)の月の支出額は平均約27万円だが、夫婦でホームに入居すれば60万円。差額の月33万円出費が増える。
介護施設の平均入所期間は4年(厚労省の統計)であることを考えると、ホームなどの入居費用の総額は夫婦で1584万円ほど用意する必要がある。そこまで含めると、老後資金の不足額は総額5734万円に達するのだ。
「そのため、多くのファイナンシャルプランナーが、老後資金に5000万円以上は必要だと指摘しているのです。1億円以上必要だと試算している人もいます」(橘氏)
国民は政府が慌てて「2000万円不足報告書」をなかったことにしたのを見て、「どうやって2000万円貯めるか」に頭を悩ませているが、それでは全然足りないという真実を誰も言わない。
※週刊ポスト2019年10月11日号