田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本の農村に中国政府が強い関心、自然・行事も観光資源に

瀬戸内国際芸術祭では農村地帯に外国人観光客も多数訪れる(香川県。写真:時事通信フォト)

 工業化が進展すれば、経済が発展する。しかし、その一方で、農業が衰退し、農村が寂れ、農民が取り残されていくという側面もある。日本では高度経済成のひずみとして、半世紀以上も前からこうした問題が深刻となっているが、高度経済成長の最中にある中国でもここ十数年、大きな社会問題となっている。

“農村を如何に振興していくか”は、習近平体制において解決すべき重要な課題の一つとして位置付けられている。

 2017年10月18日に行われた中国共産党第十九回全国代表大会において、郷村振興戦略が初めて提起され、2018年1月、中央一号文件として、“郷村振興戦略実施に関する意見”が発表された。その後2018年9月に中国共産党中央委員会、国務院は“郷村振興戦略計画(2018-2022)”を発表しており現在は、この計画をもとに、地方政府がより具体的な実施策を検討し、実行し始めている。

 郷村振興戦略計画は、“美麗中国”の鍵を握る政策である。中国の優れた伝統文化を継承する有効な道筋を示すものであり、その実行は、全人民がともに裕福になるための必然的な選択とされている。

 2020年までに制度のフレームワーク、政策体系を形成し、2035年までに農業農村の近代化を基本的に実現する。そして2050年までに、農村を全面的に振興し、強い農業、美しい農村、豊かな農民といった目標を全面的に達成させる。郷村振興戦略計画は、中国を先進的な豊かな国家にするための重要な長期計画なのである。

 目標は立派だが、どうも具体的な計画の姿が見えてこない。地方政府の政策担当者は今、血眼になって世界各国の事例を研究しているのだが、そうした中で、彼らは日本に強い関心を寄せている。

 中国のマスコミは、「日本では地方振興政策の歴史は古く、多様な方法が実践されていて、非常に参考になる」(郷村建設者“東渡”取経:去日本“跳島”帯回郷村振興新経験、2019/10/12、21世紀経済報道)と伝えており、瀬戸内国際芸術祭について詳しく紹介している。これは、“2000年から3年に一度行われている世界最大規模の国際屋外芸術祭であり、日本の農村文化の継承や発展を一つの目的としている”と説明、“中国の地方政府の担当者が視察し、強い関心を示している”と伝えている。

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