多くの人が定年を迎える60代以降は「お金にまつわる手続き」をする機会が増えてくる。だが、役所絡みの手続きは複雑で、素人の手に負えないものが少なくない。書類の記入ミスや申請漏れで思わぬ損をすることもある。そうしたリスクを避けるため、煩雑な手続きはプロに任せてしまう──これからは、そんな選択肢が有力になってくる。
例えば、亡くなった親に不動産収入や年間400万円超の年金収入などがあれば、故人の確定申告である準確定申告が必要だ。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏がいう。
「確定申告とほぼ同じ手続きですが、未経験者は慣れないため苦戦します。税理士に頼めば、費用は5万~10万円が相場です」
死後4か月以内に手続きをしないと所得税額の15%の無申告加算税が発生するケースがある。土地建物を売却したり、生命保険を解約するなど、所得が多い年に親が亡くなった場合はとくに注意が必要だ。
親の死後に不動産を相続するなら相続登記(不動産の名義変更)を行なう。法務局で申請する際の審査は厳格で、誤字脱字は許されない。司法書士が5万~15万円ほどで請け負う。
厄介なのは、亡き祖父や曾祖父が不動産を登記していなかったケースだ。司法書士の山口和仁氏が指摘する。
「登記しないまま相続を繰り返しているなどで権利関係が複雑になった場合、きちんと相続登記するためには法定相続人を遡って探して、相続人全員の同意を得る必要があります。
そうなると故人の戸籍謄本や除籍謄本など多くの書類が必要となって個人で行なうことが難しくなり、司法書士に頼むしかありません。とくに不動産を売買したり抵当を設定する場合、相続登記が不可欠です」