消費増税に伴った還元事業もあり一気に普及したキャッシュレス決済だが、そこには現金とは違った「無駄遣い」の危険がある。目先の割引やポイントにつられ、ついつい浪費してしまう人が少なくないのだ。
ファイナンシャルプランナーで防災アドバイザーの岡部梨恵子さんの経験によると、キャッシュレス決済で無駄遣いをしている人が現金による支払いに変えることで、20%ほどの節約ができるという。最新の総務省「家計調査」(2019年9月)によると、2人以上の世帯の消費支出は1か月平均30万609円。20%の節約ができれば、なんと1か月あたり約6万円も浮く。
「ポイントを多くもらおうとしたり、お金という感覚がないまま使いすぎて、つい無駄遣いをしてしまうパターンはとても多い。まずは1か月の“キャッシュレス断ち”をして、普段の月と家計を比べてほしいですね」(岡部さん)
では、なぜ同じ買い物でもキャッシュレス決済になると使いすぎてしまう人がいるのだろうか。ニッセイ基礎研究所金融研究部の主任研究員を務める福本勇樹さんが解説する。
「行動経済学に『メンタル・アカウンティング』という用語があります。同じ金額を払う場合でも、現金払いとキャッシュレス決済では価値が異なるように感じるという意味です」
2017年、全国の20~69才の男女を対象に博報堂生活総合研究所がまとめた「お金に関する生活意識調査」の結果を用いて福本さんが説明を続ける。
「キャッシュレス社会に賛成するかと尋ねると、女性は反対派が多数(61.5%)を占めた(男性の反対派は41.3%)。その理由として挙がったのが『浪費しそう』『お金の感覚が麻痺しそう』という声です。