「当店にはA5、A4しか置いていません」。最近、焼き肉屋やステーキ屋でよく見かけるこうした文言……「A5」が牛肉の最高ランクというイメージは広く認知されているが、いったい誰がどのように決めているのか。
格付けを行なう公益社団法人・日本食肉格付協会の担当者に聞いた。
「当協会の200人以上の格付員が、毎日各地の食肉市場や食肉センターで一頭ずつ格付けをしています。同じ農家で育てられた牛でもそれぞれ肉質が異なるので、原則すべての牛を格付けしております」
では「A」や「5」の記号は何を意味しているのか。
「アルファベットのA・B・Cというのは『歩留等級』といって、枝肉から取れる部分肉(可食部位)の割合を3段階で表わしています。肉質に関係があるのは、1~5までの『肉質等級』で、5が最高です。同じ5等級であれば、A5 とB5では肉質に違いはありません」
つまり、AはBやCよりも食べられる割合が多いというだけで、業者には大事なことでも消費者にとっては関係ないのだ。
ところが、実際にはA5ランクに比べてB5ランクがアピールされることはない。理由は単純だ。
「『BはAよりも悪い』という印象を与えると懸念してのことでしょう。肉質では、A4 よりもB5 のほうが高いはずなのに、A4 を謳う店はあっても、B5 を謳う店は見たことがありません」(栄養士で「お肉博士1級」の資格をもつ料理研究家の長田絢氏)