スーパーマーケットが繁盛するかどうかは、立地や品揃えの良さによるところが大きい。個人経営のスーパーが大手チェーンに立ち向かうのはなかなか厳しいが、都内に住むYさん(40代・男性)の自宅近くにある「K」という個人スーパーは、流行っている様子をまったく感じさせないにも関わらず、一向に店をたたむ様子はない。かねてより不思議に思っていたYさんだが、つい最近、そのカラクリを知ったという。
Yさんが23区内でも庶民的と言われる地域に引っ越したのは、3年前のこと。Kは自宅から数分だが、最寄り駅とは反対方向なので、しばらくその存在を知らなかった。しかし、子どもが保育園に通うようになり、送り迎えのルート上にあるKを発見。子どもにねだられてお菓子やジュースを買ううちに店主と親しくなり、挨拶を交わすようになった。
YさんがKに行くのは夕方だが、いつも店内はガラガラ。品揃えも値段も特筆すべきものはなく、店の前に停められた軽トラックもボロボロで、「この店は大丈夫なのかなぁ」と思っていたYさんだったが、ほどなくそれが余計なお世話だったことを知る。Yさんは言う。
「私が近所の公園で子供を遊ばせていると、公園脇にある大きなお屋敷の庭木の手入れをKの店主がしているのです。その家は、入り口からして立派で、庭には綺麗に手入れされた植木が立ち並び、その奥に見事な和風建築の母屋がある“いかにもお金持ちの家”。失礼ながら、ヨレヨレのスウェットで店に出ている店主と同一人物とは思えませんでしたが、『こんにちは~』と挨拶してくれたので、Kの店主で間違いありません。少しおしゃべりすると、その家が自宅ということがわかりました」(Yさん。以下同)
家に帰り、妻にそのことを話すと、妻もビックリした様子。しばらくの間、夫婦の間で「どうしてあんな立派な家に住めるのだろう」と謎だったが、保育園のママ友の中に生粋の地元っ子がいて、謎はあっさり解決した。