労働政策研究・研修機構が貧困専業主婦を対象に実施した「幸福度調査」でも、35.8%が10点満点中8点以上の「高幸福度」と答えた。3人に1人がとても「幸せ」と感じているのだ。
専業主婦全体でみても同様だ。内閣府の「国民生活に関する世論調査」では、働く女性よりも専業主婦の方が一貫して幸福度が高くなっており、専業主婦が「幸せ」と感じるのに夫の収入は重要な要因でないことがうかがえる。
そもそも、「専業主婦」という存在はいつ生まれたのか。『上級国民/下級国民』(小学館新書)の著者で作家の橘玲さんが説明する。
「もともと日本は、江戸時代はもちろん、戦前までほとんどが共働きでした。しかし戦後、高度成長期に突入し、日本は『総中流』社会に移行します。平均所得は右肩上がりに増えていき、多くの世帯で夫の給料だけで一家を養えるようになった。
そうした中で、家事・育児を妻に丸投げして、夫は会社に滅私奉公する日本的雇用が定着し、サラリーマンが社会の中枢を担うようになった。こうして専業主婦の時代が本格的に到来したのです。
戦後の日本人はアメリカのホームドラマに憧れ、『専業主婦』は豊かさの象徴でした。その欧米は今では共働きが当たり前の社会に移行していますから、専業主婦は高度成長期という時代だからこそ成立した“極めて特殊な存在”といえるでしょう」
女性の働き方に詳しいジャーナリストの中野円佳さんが付け加える。
「他のアジアの国々では、一家総出で働いていた時代から、専業主婦化が進み切る前に夫婦共働きへとシフトしました。日本のような『専業主婦黄金期』はありません。そのため日本の『専業主婦』に憧れを抱くケースもあります」