しかし、そんな専業主婦の黄金期は終わりを告げている。バブル崩壊で長い不況に陥り、夫の給料だけでは生活しづらくなったことで、女性も苦労して賃金を稼ぐことが期待される時代に突入した。にもかかわらず、女性はこれまで通り子育てをし、夫の食事を作ることも求められてしまう。
「とりわけ風向きが変わったのは、安倍政権が『女性活躍』を唱え始めてからです。ほんの少し前まで、保守派の政治家は『妻が家を守るのが日本の美風』と言っていたのに、突然、『女性が子供を産んでも働き続けられる社会』を目指し始めました」(橘さん)
女性に立ちはだかるさまざまな「理不尽の壁」
だが、そうして女性の社会進出が進んでも、女性の地位は一向に向上していない。非正規労働者の割合は、1990年から2011年までの約20年間に、男性は8.7%から20.1%に増えたのに対し、女性は37.9%から54.5%と大きく増加。男女の賃金格差も、女性の賃金は1990年代まで男性の6割程度で推移しており、その後、格差は縮まりつつあるものの、直近(2018年時点)でも男性の7割超にとどまる。
これでは女性の働こうとするモチベーションが上がらないのも当然だ。男性側の意識の問題も大きいだろう。
「妻が働きたいと言い出した時に、『家のことがおろそかにならなければいいよ』という男性はいまだに多い。周さんの出身、中国は共働きが前提で、男性が家事・育児にかかわる時間が他の国より長いとされているのとは対照的です。また、子育てをしながら働こうにも、待機児童問題をはじめとする保育園の問題など、制度的な障壁も多くあります」(中野さん)