日本の家庭の冬の風物詩ともいえる「電気こたつ」だが、その姿を見る機会が減りつつある。日本電機工業会の「1990~2018家電生産推移」によると、電気こたつの生産台数は1990年の178万2065台から、ほぼ右肩下がりで減少。同統計では2003年の24万7735台を最後に、それ以降の数値は公表されていない。日本の家庭の“こたつ離れ”ともいうべき現象はいかにして進んだのか。リアルな声を集めた。
実家暮らしの30代の男性会社員・Aさんは、ある年から、居間に出されていたこたつが姿を消し、代わりにソファが鎮座したと話す。
「冬はこたつでテレビを観ながら鍋をつつき、みかんを食べ、まったりするのが好きでした。兄弟が集まる年末年始にも、こたつが“主役”。同じところに足を入れて、ぬくぬくしながらみんなで同じ時間を過ごすのは、特別感があって好きでした。冬は、こたつに入るのが楽しみでしたね」(Aさん)
こたつを処分した両親に話を聞くと、床暖房とオイルヒーターを導入することにしたという。Aさんは、「なぜ急に?」と不思議に思ったが、事情を聞いて納得したと話す。
「両親にとって、こたつは、もともと掃除が大変だったようです。こたつ布団をあげて掃除したり、何かこぼした時はその布団やカバーを洗濯しなくてはならない。テーブルは通年で使えるタイプ(家具調こたつ)でしたが、布団はシーズンごとに出し入れする必要があって、それも大変。さらに座ったり立ったりが負担になるとのこと。高齢者は和風のほうが好きかと思いきや、歳をとってからこそ、洋風のほうがいろいろとラクなようです」(Aさん)
30代の女性会社員・Bさんの実家でも、数年前にこたつが“廃止”された。そこにはBさんの妹の意向も大きかったという。
「こたつって臭いがこもるじゃないですか。それが母と一緒に実家に住んでいる妹に不評だったようで……。確かに実家にいたときは、かけ布団をめくると父の足の臭いが気になりましたし、妹も冬場にブーツを履いた後に蒸れた足を入れたくないという気持ちがあったようです」(Bさん)