新年を迎え、2020年の景気が気になる人も多いだろう。景気や株価を予測するうえで参考になるのは経済指標や金融政策ばかりではなく、スポーツイベントや天候といった身近な事柄も密接に関連している。身近な事象と景気との関係に詳しい三井住友DSアセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、「経済活動の主体は一般の人々であり、景気を動かしているのは彼らのマインドにほかなりません。だからこそ景気の『ジンクス』は、偶然とはいえない確率で景気動向や株価と一致しています」と話す。
2019年を振り返ると、日本中を盛り上げた話題としてラグビーW杯での日本代表の活躍がある。10月13日のスコットランド戦で勝利し、史上初の決勝トーナメント進出を決めた日の翌営業日となった10月15日の日経平均株価は、なんと前日比408円34銭も上昇した。
「この試合は39.2%という高い視聴率を記録しており、人々のマインドに少なからぬプラスの影響を与えたと考えられます」(宅森氏)
大会期間を通しての日経平均株価の推移を見ても、開幕日である9月20日の終値が2万2079円09銭だったのに対し、閉幕日の翌営業日である11月5日の終値が2万3251円99銭となり、1172円90銭も上昇している。
2020年は東京五輪が開催される年だ。OECD諸国の実質GDP成長率も、夏季五輪の年は前年を上回ることが多いという。日本国内をみても、日本代表のメダルラッシュの年は景気拡張局面と重なることが多いと宅森氏は指摘する。
1968年のメキシコシティ五輪から2016年のリオ五輪までの13大会のうち、日本の金メダル獲得数が2ケタに達した5大会では、大会期間中の日経平均株価はすべてプラスとなっている。ちなみに10個に到達しなかった大会は、1大会をのぞいてすべてマイナスで推移している。
「唯一の例外は2012年のロンドン五輪。金メダルは少なかったのですが、銀銅を含めたメダル数が38と当時で史上最多となったので、国民のマインドに大きくプラスに働いたと考えられます」(宅森氏)
しかも、今大会はなんといっても、自国開催だ。「過去の記録を見ると、開催国の株価は前年を上回る傾向がある。日本の株式市場にも追い風となりそうです」(宅森氏)。