お笑い芸人の多くがコンビを組んで活動している。それはツッコミをしてくれる人が近くにいると笑いを作りやすいからである。ピンだとツッコミは観客に委ねるか、自分でツッコまなければならない。トリオだとボケとツッコミともう一人の立場をするかが難しい。芸人はコンビが多いので見本にする教材も豊富で、芸人デビューする際には、まずはコンビを組むことを考える人が多い。それでは芸人はどのようにコンビを組んでいるのだろうか。
最近は各事務所が養成所を開校しているのでそこに通って相方を探す人が多い。養成所では“相方探し”の授業も開かれている。自己紹介やネタを見て、相方になってほしい人を探すのである。実際に養成所でコンビを組んだ男性芸人のAさん(芸歴11年目)に話を聞いた。
「養成所には中学や高校の同級生と一緒に入ってくる人や兄弟で入ってくる人もいて、そういう人は最初から相方が決まっていましたが、大半は一人で入ってくる人ばかり。相方探しの授業では、みんな自分のネタや趣味や特技などアピールして相方を決めていく感じでした。僕はツッコミをやりたかったので面白いボケの人を探していて、ネタが面白かったのと趣味が同じだということでコンビを組みました。養成所の期間は1年あるのですが、1年以内に解散して別の人とコンビを組む人もいます」
幼馴染みや同級生とコンビを組んだ場合、それまでの関係性や経験の蓄積があるのでそれをネタにできるし、気心がしれているのでやりやすい。その反面、友達からビジネスパートナーに変わることに戸惑いを感じる人たちもいる。一方、養成所で出会ってコンビを組んだ場合、そこから相手のことを知っていかなければならないが、最初からビジネスパートナーなので相手に遠慮せず物事を言い合える関係を築きやすいという面もある。
Aさんによるとコンビ結成は“恋愛”と似た感覚なのだという。
「相方に『コンビ組んでください』って伝えるとき、女性に告白するときと同じ緊張を感じました。『断られたらどうしよう?』『自分のこと気にいってくれてるかな?』『他の人とコンビ組もうと考えてないかな?』……など考えてしまって、1週間言い出せずにいました。当時それを知人に話したら、『言わないで後悔するより、言って後悔した方がいいだろ!』ってアドバイスを受けて、その日のうちに“告白”しました。そうしたら向こうも実は僕のこと気にしてくれてたみたいで、すぐにコンビを組むことになりました」(同前)