キャッシュレス化の先に求める、生活の変化は?
さらに、キャッシュレス化が進んでいった先の社会に、どんな生活の変化を期待するのかについてもきいてみたところ、結果は以下のようになりました。
●キャッシュレス化による生活の変化への期待(選択肢呈示・複数回答)
・1つの決済ツールで国内外あらゆる支払いが完結:45.7%
・あらゆる入出金が簡単に一元管理できる:32.5%
・無料ないし小額の手数料であらゆる人と手軽に送受金が可能になる:23.3%
・先払い・後払いなど自分の都合に合わせた支払いを自由に選べる:22.9%
・異なる相手への複数の支払いがまとめて完結できる:18.4%
・支払う行為・動作をせずとも勝手に決済が完了している:14.7%
・余剰なお金について使い道や資産形成のレコメンドが受けられる:6.8%
・期待することはない:24.7%
さまざまな変化のうち、期待の特に大きかった上位2つをみると、「1つの決済ツール」、「一元管理」と、一元的・統合的な決済やお金の管理を望む意識が垣間見えます。
私の周囲で「現金派」を貫いている人たちに話をきくと、「キャッシュレス決済のために、自分のお金がいろいろなツールに分散してしまうのがいや」「店によって、この決済手段は使える、あの決済手段は使えない、と考えさせられるのが面倒」という意見をよく耳にします。
現在のキャッシュレス化の動きを見ると、新興のQRコード決済をはじめ、さまざまな決済ツールがひしめく、まさに群雄割拠状態。それぞれが特徴あるサービスを打ち出してしのぎを削る状況は、望ましい部分も当然あります。ですが、その状況は一部の生活者の目には「乱立」のように映っている可能性もあり、それが上述のキャッシュレス化予測と期待のギャップにつながっているともいえそうです。
「キャッシュレス還元」のノボリが何本もはためき、ドアや窓にもステッカーが貼られた店舗。そんなお店のレジでも、財布からお札と硬貨を取り出し、支払っている人の姿をいまだによく見かけます。金銭的なメリットは明らかなのに、それでも動かない生活者たち。彼らの気持ちに丁寧に寄り添いながら次の打ち手を考えていくことが、キャッシュレス化のさらなる進展を左右する、大事なポイントになっていくのではないでしょうか。
◆レポート/三矢正浩(博報堂生活総合研究所 上席研究員・HAKUHODO Fintex Baseメンバー)