中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

テレビ番組の取材依頼を受けて実感した「下請け会社」の疲弊

 そして名刺交換となったのですが、やっぱり……という状況に。彼女は電話とメールでは民放の局名を伝えてくれていたのですが、名刺を見ると局のロゴがあり、部署名が書かれているものの、下の方には「所属:株式会社〇〇」と制作会社の名前が書いてあるのです。

 今までこうした取材を受けるにあたり、局の正社員と会ったことは一度もありません。全員が制作会社所属のディレクターです。彼女とカメラマンはすでに私が紹介した鬼女の取材は局で終えており、それが終了して私の事務所の近くまで来てくれたのでした。

 とにかく猛烈に忙しく締め切りをこの日は6本抱えていたため、本当は取材を受けたくもなかったのですが、「もしもオレが断り、鬼女を紹介しなかったら山田さんは窮地に追い込まれるのだろうな……」という予感があったため、取材は受けました。

 取材の時間中、山田さんもカメラマンも非常に的確な指示を出してくれました。仕事っぷりは優秀なのですが、ふと悲しくなったのが、この2人の頑張りを果たして発注側である局の正社員は知っているのだろうか? ということです。「ネットの特定班に詳しい専門家と鬼女の取材を明日中に取って来い!」と指示を出すことは簡単です。でも、ドンピシャの人間を見つけるのは大変ですし、そんな人が見つかってもその人が取材を受けてくれるとは限らない。何しろ1日しか時間がないのですから。

 そうした苦境の中、ようやく私にたどり着いたのだろうことは想像に難くないので、取材に協力しましたし、取材終了後は逆に気を遣って、「今はコロナウイルスとか色々ありますから、お蔵入りになっても私の方は気にしないでくださいね」と伝えました。

 そこでテレビ業界の皆様に言いたいのが、台風などの災害や殺人事件等の緊急を要するものを除き、急過ぎるスケジュールで取材する必要がないものにも1日だけしか取材の猶予を与えない、という仕事の進め方はやめた方がいいということ。下請けですから当然発注主の言うことは聞くわけですが、当然そのスタッフと取材対象が疲弊するんですよ。

 下請けのことを「指示すれば何でもやってくれる人」的扱いにするのはテレビに限らずどの業界でもあるかもしれませんが、少しは下請けの「働き方改革」も考えてあげてください。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。