国の専門家会議が「1~2週間が感染拡大を抑えられるかどうかの瀬戸際」と発表した直後、経済の“パンデミック”が先に日本を直撃した。
日経平均株価は2月25日に一時1000円を超える急落、翌日以降も売りが止まらない。新型コロナウイルスの感染拡大の中でも高値を維持してきた株価の天井が一気に崩落したかのようだ。
追い打ちをかけるように国際オリンピック委員会(IOC)の最古参委員ディック・パウンド氏が、「東京五輪の開催の判断期限は引き延ばせて3か月だ」と五輪中止への最後通牒を突きつけた。中止となれば、五輪後を含めて「32兆円」と試算されている経済効果が吹き飛んでしまう。
そうなると国民生活への影響は感染の危険だけではない。
「新型コロナウイルスによる経済へのダメージは長引く。株価が低迷し、年金引き下げにつながる可能性はありうる」
そう指摘するのは金融論が専門の相沢幸悦・埼玉学園大学経済経営学部教授だ。
「国民の年金積立金169兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、年金財政上、毎年一定の運用益を稼ぎ出さなければならない。そのため資産の5割をリスクの高い株に投資している。国内株と外国株を25%ずつが原則だが、株価が下がれば利回りどころか評価損が発生する。
今回のコロナ暴落は世界同時に起きており、株価の回復が遅れてGPIFの資産が大きく毀損すると、場合によっては年金生活者の支給額を引き下げなければならない事態も起きる」