新興市場のIPO(新規上場)銘柄で大きな利益を狙う方法は複数ある。たとえ上場初日にトレードできなくても、その後の中長期的な値動きを狙うことで、大きな利益を出せることも少なくない。投資情報サイト「IPOジャパン」編集長・西堀敬氏が、IPO投資の中長期戦略について解説する。
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中長期戦略は、IPOから1年以内の銘柄の「好業績」を材料に、大口の買いを入れる機関投資家に買いに乗るいわば「便乗作戦」だ。やり方は非常にシンプルで、IPO後に発表される開示情報の内容をチェックし、四半期決算の好転や業績予想の上方修正、増配などが公表されたら、その後に買いを入れていくというものだ。
そもそもIPOを予定している企業は、取引所が定める厳しい審査基準をクリアするために、保守的な業績予想を立てる傾向が強い。上場審査の過程では、月次の予算を継続して達成することが求められるからだ。つまり、上場した会計年度の業績予想は慎重に達成可能な見通しのもとで作成されるので、上場後の決算は上方修正が起こりやすいといえる。
一般的に機関投資家は、新興市場に上場する時価総額が小さく流動性の低い銘柄を投資対象にするケースは少ないといわれる。だが、すべての機関投資家がそうかというと、そんなことはない。成長株や中小型株主体の投資信託などは、業績予想の上方修正などでファンダメンタルズの強さが確認できれば、新興市場に上場した銘柄も投資対象に組み入れる。
こうした機関投資家が組み入れ始める時期に乗るのが、この便乗作戦だ。上場後1年以内という条件を設けているのにも理由がある。機関投資家の買いの影響が如実に出るからだ。そもそも上場後間もないIPO銘柄はベンチャーキャピタルなどを除けば、大きな資金を動かす投資家の買いが入っていない。さらにIPO後の90日や180日のロックアップ制限が解除されれば、ベンチャーキャピタルなどの利益確定売りが出ることになる。
その需給の緩んだ後に大きな買いが入れば、株価は一気に反転上昇の勢いを増す。また、ひとつの機関投資家の買いが入れば、別の機関投資家も追随して、さらに株価上昇に拍車がかかる可能性もある。実際、2019年のIPO銘柄でも、上場後にいったん株価が調整した後に、開示された業績予想の上方修正や好決算を好感した機関投資家の買いを背景に、株価が急上昇した銘柄がいくつも見られた。