突然やってくる、親の介護問題。「食堂のおばちゃん」作家として知られる山口恵以子さん(61才)の場合、父の急死(2000年)が引き金となり、母に認知症の症状が顕著に表れるようになったという。以来、母が91才で亡くなる2019年1月まで介護の日々が続いた。
最愛の母・絢子さんと過ごした最期の日々をあたたかな筆致で綴った山口さんの新著『いつでも母と』(小学館刊)を読むと、母の認知症発症から介護、自宅での看取りまで、戸惑いと不安の中、家族が決断しなければならないことがいかに多いかがわかる。
実際に親の介護に直面した時、施設入居にせよ、在宅での介護サービス利用にせよ、親が嫌がるケースは少なくない。山口さんも、こう語る。
「母をなだめすかして、デイサービスに通い始めましたが、3か月で嫌がるようになってやめてしまいました。自分の自由な時間を確保しようと説得を試みたが、納得してもらえませんでした」(山口さん)
そんなときは「信頼できる人から勧めてもらうといい」と介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんはアドバイスする。
「一般的に親という立場上、子供の話に耳を傾けない親は多いです。そんなときは、地域包括支援センターの職員や、主治医から話してもらうと納得してもらえることがあります。それでも親が納得してくれず、このままでは共倒れになりかねない場合は、『病院に行く』とごまかしてショートステイや施設に連れていく人もいます。もちろん嘘はよくありませんが、限界だという場合は仕方がないこともあります」(太田さん)
手を貸さない親戚はうまくかわすが勝ち
施設に入ることで親と子供は話し合えていても、親戚が「もっと親を大事にしなさい」「施設に入れるなんてひどい」などと、口出ししてくるときはどうすればいいのだろうか。
「お金も出さない、手も貸さない親戚なら、何を言われても気にせずうまくかわしましょう。ただし実際に介護が始まると、親戚に親の通院をお願いするなど、手を貸してもらうこともあります。今後お世話になるかもしれない親戚なら、頻繁にお礼の言葉を伝えて、円満な関係を築いておくと安心です」(太田さん)