田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本政府に中国と同じコロナ対策ができるか?

北京の地下鉄入り口で防護服姿の保安要員から検温を受ける乗客(AFP=時事)

 世界の株式市場を「コロナ・ショック」が襲っている。3月9日の日経平均株価は▲5.4%、香港ハンセン指数は▲4.2%、韓国総合指数は▲4.2%、上海総合指数は▲3.0%下落するなど、この日のアジア市場は大きな下落に見舞われたが、欧米市場の動きをみると、NYダウは▲7.8%、ロンドンFT指数は▲7.7%、ドイツフランクフルトDAX指数は▲7.9%下落するなど、アジア市場以上の暴落となった。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けての世界経済の減速懸念、さらには原油先物市場の急落を嫌気して、世界の株式市場は大混乱となっている。

 感染の状況だが、9日の時点で、イタリアの累計感染者数は9000人を超えており、韓国、イランでは6000人、日本、フランス、スペイン、ドイツなどでは1000人を超えている。アメリカは、感染者数こそ687人だが、死者は22人出ており、日本を上回っている。

 中国の累計感染者数は8万人を超える規模ではあるが、その増加数は減り続けており、9日の増加数は武漢市で17人、それ以外は2人に留まった。イタリア、イランは1000人規模、韓国、ドイツ、フランス、スペイン、アメリカなどは100人規模で増加しているのと比べ、対照的である。

 9日の中国本土マスコミ報道によれば、国家衛生健康委員会ハイレベル専門家グループの鐘南山グループ長は、「世界全体で見れば流行はこれから広がる段階にあり、少なくとも6月までは流行が続くだろう。中国における新型肺炎の拡大防止・コントロール政策の重点は、ウイルスの流出を防ぐことから、流入を防ぐことに変わるだろう」と述べている。

 中国では他国に先駆け、ウイルス感染の封じ込めを進めつつあるが、今のところ、その対策を緩めるつもりはないようだ。中国政府が今後も、ウイルス感染の拡大防止を優先させ、国境を挟んだ人、モノの移動を制限するとすれば、グローバル経済は、需要、供給の両面から大きなダメージを受けるだろう。リーマン・ショック直後、中国は4兆元の積極財政政策を打ち出し、世界経済を下支えしたが、もし、今回、同じような経済危機が起きたとしても、中国は需要を創出するどころか、輸入制限によって、景気悪化を助長しかねない状況だ。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。