田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本政府に中国と同じコロナ対策ができるか?

ルールより安定を重視した緊急措置

 それでは、他国が中国と同じことをできるだろうか。

 たとえば、日本の大都市で感染爆発が起きたとして、日本政府は都市封鎖できるだろうか。全国でマンションの入り口に政府の意を受けた管理人を立たせ、誰が出入りしたかチェックさせられるだろうか。

 小、中、高、大学などの教育機関はすべて閉鎖する。外出時にはマスク着用を義務付け、至る所で体温を測定する。地下鉄ではアプリを使って乗車を記録し、出勤に際しては会社が発行した出勤許可証を携帯させる。誰かがビジネス以外で別の都市に移動する場合、その人を14日間ホテルに“軟禁”する……。

 生産に関しても同じ調子で、中国当局が厳しく規制・管理してようやく感染拡大が防げているという状態だ。

 中国では、景気を犠牲にした感染防止対策を行う一方で、景気を支える手厚い政策を打ち出している。金融システムの安定、経済の弱い部分へのセーフティネットの拡充が真っ先に行われ、ルールや約束よりも、結果としての安定を重視するといった緊急措置が行われている。

 日本の場合、日銀は、金融行政を駆使して、銀行による中小零細企業への貸し剥がし、貸し渋りを止めさせられるだろうか。つなぎ融資を指導できるだろうか。日銀が自ら株式を買うだけではなく、公共法人、年金運用機関、民間の保険会社、証券会社の自己売買部門などに対して売りを控えさせて、買い支えを指導できるだろうか。

 かつての大蔵省銀行局、証券局は実質的に銀行や証券会社のトップ人事に介入できるほどの力を持っていた。その頃であれば、あくまで非常事態の処理としてだが、ルール、規則を超えた金融機関に対する少々乱暴だが柔軟なコントロールが何とか出来たかもしれないが、今となってはとてもそうはいかないだろう。

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