回転寿司業界ではネタの新鮮さや価格で大手チェーンが鎬を削っているが、大手以外の全国進出も目覚ましい。地元の海の幸をひっさげ、北海道の「函太郎(かんたろう)」「根室花まる」、北陸の「金沢まいもん寿司」といったご当地系のほか、専門家から“グルメ系”と呼ばれるジャンルの店も勢いを増している。
これらのジャンルは大手が取り逃がしている「大人の客」を引きつけていると分析するのは回転ずし探究家の柳生九兵衛さん。
「スシローをはじめとした大手は酒類をビールなど数種類程度しか置いていないが、大人向けにアルコールを充実させ、それをウリにする店も登場しています。たとえば東京の『銀座沼津港』。ここは日本酒やビール、ワインなどアルコールメニューを充実させており人気が高い。
安さをウリにする店とは異なり少し価格は高いのですが、もちろん値段では大手の安さには勝てないけれど、大人向けに厳選した質の高いネタを出す。大手チェーンはお酒を飲みながら長居されると回転率が下がってしまうので、こういった真似は絶対にできない」
ゆっくりグラスを傾けながらつまむおすし。まさに“回らないすし”に近い利用法だが、大きなメリットがあると柳生さんが続ける。
「たとえば、高級すし店のカウンターでお酒も飲めば数万円かかるところ、回転ずしなら高い店でも数千円くらいで楽しめるのがうれしい。ファミリー層をメインにする大手店では、酔ったお客さんに長居されたくないのでこういった戦略は取らないはずです」