将来も今と同じ水準でもらえるのか、繰り下げや繰り上げはどちらが得なのか、など、年金には疑問がつきまとう。さらには、煩雑で、しかも忘れると受け取りに影響する年金の「手続き」も多い。
都内に住む専業主婦の山口さん(65才・仮名)は、年金を受け取り始めて、あることに気づいた。サラリーマンだった夫(70才)は60才で定年退職。夫婦ともに満額(加入期間40年)の年金を受け取れると思っていたが、振り込まれた金額を確認すると、どうにも少ない。年金事務所に問い合わせてみると、「奥さんに5年間の保険料未納期間があります」──。
こんなふうに、知らない間に未納期間が発生していて、愕然とする人は少なくない。「年金博士」ことブレインコンサルティングオフィス代表の北村庄吾さんが話す。
「年金は放っておけば自動的に受け取れるものではなく、自分で手続きしないと受け取れません。受け取る際の請求だけでなく、家族や自分の仕事、家族構成が変わるときにもさまざまな手続きが必要。怠ると、本来もらえるはずのものがもらえなくなります」
山口さんも、ある重要な手続きを知らなかったばかりに年金が減らされたわけだ。制度そのものが複雑なこともあり、年金の手続きは面倒に思える。しかし、基本である国民年金・厚生年金を請求する手順は意外と簡単だ。
年金は現在、原則65才で受給開始となっている。65才の誕生月の3か月前に日本年金機構から「年金請求書」が送られてくるので、必要事項を記入して、戸籍謄本や住民票、振込先の金融機関の通帳、印鑑を用意して年金事務所(自営業者など国民年金のみの人は市区町村の年金窓口)に提出すればよい。
しかし、送られてくる請求書を待っているだけでは、冒頭の山口さんのように損するケースも多いのだ。特に女性の場合は、年金制度の“種類”がライフイベントごとに変化しがちなため、自ら変更の手続きをしなければならない。たとえば、結婚前にOLをしていた会社で厚生年金に入っていても、専業主婦になると、会社員の妻として保険料が免除される「第3号被保険者」になるし、夫が会社を辞めてフリーランス(自営業)になったら、専業主婦の妻は国民年金に入り直す必要がある。